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139)どっちが「共産主義」だ!

 2023年6月、私がフランス語を習っているアンスティテュ・フランセ大阪を久しぶりに訪ねました。元産経新聞パリ支局長の山口昌子さんの講演を聴くためでした。(この2年間、授業はオンラインでアンスティテュに直接足を運ぶことはなかったのです。)彼女は1990年から20年以上パリ支局長を務めた伝説の人物なのです。彼女の講演の主題は、ミッテランから始まる彼女の支局長時代の各大統領下でのフランスの政治経済状況だったのですが、コロナ禍での話題にも触れられました。質疑応答の時間に、私は特養院長として出席した2021年のフランスとのオンライン会議の経験をコメントしました。

 その時、フランス側の話題提供者であるパリの特養の女性院長の発言が有事の際のフランスの底力を知らせてくれたのです。2020年春のフランス全国を襲ったコロナ禍で死者が急増し、病院崩壊が起こった時のことです。特養入居者のコロナ感染者は受診を控え、特養で緩和療法に徹して欲しいという政府要請が書面で届いたそうなのです。それを本人もその家族の大多数もが了承したのです。それに加え、医学生と看護学生に対し、特養に支援に赴くようにと、これも政府が要請し、多くの学生がそれに応じたのです。山口さんもそのことはご存知で、「これはフランスの伝統で、solidarite(連帯)そのものなのです。」とおっしゃっていました。

 その後ネットでこの関連事象を調べたところ、中国での事件を見つけました。2022年末に中国江蘇省徐州医科大学で、新型コロナ患者を受け入れる最前線で研修しろという当局の要求に反対するため100人以上の学生による抗議デモが行われたとのことでした。 その理由が、感染の危険性と賃金の安さだったそうです。

 上記のフランスの例と中国の例を、国名を隠して紹介したら、恐らく多くの人が、真逆の回答をするように思います。この中国でのデモは、ミニ天安門事件とでも言えるかも知れませんね。こういうことがこれからも頻発すれば、―88)すべては「プラハの春」から始まったー で述べたフランシス・フクヤマの1992年の著作「歴史の終わり」(世界の歴史は民主主義と自由経済の勝利に終わる)は、発刊当時はフライングであったかも知れないけれど、やはりその可能性は否定できないと思い始めています。

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木戸友幸
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