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148)カッコーの巣

 2021年10月9日のNIKKEIプラス1(日経土曜朝刊の付録)に「洋画の邦題、原題から離れすぎ?」というタイトルの記事がありました。洋画の邦題をいくつか取り上げて、原題とまったく違う理由が中心に書かれていました。リチャード・ギアの代表作であるAn Officer and a Gentlemanは「愛と青春の旅立ち」と、最初はちょっとダサいと思われた邦題も、蓋を開ければ大入り満員で勝てば官軍。それ以後の邦題にはやたらに愛の文言が入ったといった感じで面白おかしく書かれていました。

 以前、当異文化ブログの 81)「プラスティック」で在米数十年のハリウッド映画に詳しい高校の同級生Tくんのことを書きました。このNIKKEIプラス1の記事を読んで、Tくんが教えてくれた邦題の誤訳を思い出しました。ジャック・ニコルソンが精神病患者の役で怪演した「カッコーの巣の上で」です。この原題はOne Flew Over the Cuckoo’s Nestです。この原題のCuckoo’s Nest(カッコーの巣)は精神病院のことなのです。映画ではニコルソンが首謀し、その精神病院を脱走するのです。ですから原題のflew over(上を飛び去った)という部分に重要な意味があるのです。「カッコーの巣の上で」では、精神病院の屋根の上でとどまったままで、飛び去るという動きはまったく読み取れません。ということで、この邦題をつけた人物は原題の意味を理解できていなかったとTくんは鋭く指摘したのです。すごく理論的でしょう?米国で何十年も仕事をしながら暮らしてきた映画ファンの面目躍如です。

 日経のこの記事では、誤訳めいた邦訳の話はまったく書かれていませんでした。まあ、日経ほどの著名日刊紙では、過去の話でもあまり非難めいた話は書けなかったのだと思います。

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木戸友幸
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