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5) プライマリ・ケア学会での発表

 外国人診療を初めて1年余り経つと、症例もかなりの数になってきました。これらの症例の大多数が心身症的な要素を持っており、そのことを念頭に置いて対処すると比較的簡単に改善するということが分かりました。

 83年に米国から帰国してすぐに日本プライマリ・ケア学会(現プライマリ・ケア連合学会)に入会していたのですが、一度もまだ演題を発表したことがなかったのです。そうだ!この外国人診療の体験を発表しようと思い立ちました。内容はそれなりに自信がありましたが、演題のタイトルについてはかなり迷いました。学会発表でも、本の出版でも、タイトルのインパクトに評価が左右されることが多いからです。最終的に決めたタイトルは、「心身症シュミレーションモデル」でした。来日して間もない外国人という心身症発症の可能性が高い状況で発症した心身症に対し、彼(彼女)らの言語や文化に合致した適切な医療的な対応をすると、症状は速やかに改善するということを、このタイトルで表したのです。典型的な心身症を、型通りに対応すれば治る、まさにシュミレーションモデルです。

 発表は特に問題なく行えました。聴衆の反応もよく、質問もたくさん出ました。その中で、一つ少し悪意があるともとれるコメントもありました。心身症に詳しいベテランの医師からのものでした。「確かに、初回はそういう患者はうまく治療に反応してくれます。でも、そのほとんどはすぐ再発して、戻ってきますよ。心身症は状況にも左右されますが、やはり素因のある人に起こるんですよ。」

 国立大阪で初めて自分で見つけたささやかですが、オリジナルな仕事が、学会発表までもっていけたことで、満足感がありました。学会の2か月くらい後で、学会の印象的な発表についての意見を述べる記事が、プライマリ.ケア学会誌に掲載されました。その中で、研修医が投稿した小さな意見に目がとまりました。私が発表したセッションについての意見でした。いわく、外国人の診療の発表に強い興味を覚え、自分も将来関わってみたいと思った、心身症専門医の、ネガティブなコメントがあったが、あれはあの場にはそぐわないと思った。研修医らしい率直な意見でした。また、私と同じ思いを聴衆も感じてくれていたんだと更なる満足感を覚えました。

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木戸友幸
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