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90)IDを巡る考察

 2019年9月、スペインとフランスを巡る10日間の旅行をしました。最後に3日間を過ごしたパリで20数年ぶりにルーブル美術館を訪れました。今回は、作品の背景を含めてじっくり鑑賞しようと思い、日本語のオーディオ解説器具を借りることにしました。すると、保証のために写真付きのID、日本人ならパスポートをと要求されました。天下のルーブル美術館ですから、まさか紛失や盗難はないとは思いましたが、海外旅行者にとって命の次に大事なパスポートを例え数時間でも他人に預けるのは非常に不安でした。そこで、ポケットの定期入れを探ると2枚の写真付きIDが見つかりました。日本医師会発行の一応一部英語表記もある写真付き医師証明カードと、私が顧問医を務めるエールフランス/KLMの写真付きIDでした。これは英語とフランス語の2ヶ国語表記です。どう考えても、後者の方がフランス人にはよりアピールすると思い、 AF/KLMのIDを差し出すと、受付嬢はニッコリ笑って、「あなたお医者さんなのね。もちろんこのIDで結構ですよ。」と言ってくれました。

 さて、日本では写真付きのIDといえば、車の免許証かパスポートくらいしかなく、その免許証や社員証で写真付きでも、日本語表記のみです。ですから、海外で、写真付きのIDを要求されてもパスポートしかない人がほとんどです。国境を接する国が山ほどあるヨーロッパでの状況はどうなのでしょうか。私が2年半を過ごしたフランスを例にとって紹介します。結論から入ります。フランス人は社会人なら、誰でもパスポート以外の写真付きIDを所持しています。会社員、公務員、医師、教師、etc. 無職の人でも、何らかの公的支援を受けていることを証明する写真付きIDを持っています。もちろんフランスのIDですからフランス語で表記されおり、英語併記ということはほとんどありません。しかし、フランス以外のヨーロッパ諸国でもIDに書かれたフランス語を全く解さない人はあまりないと思います。(まあ、チンプンカンプンでも顔写真は分かるので、立場上分かったふりくらいはするでしょう。)

 ということで、これだけグローバルな世界になり、日本人の海外旅行も団体ツアーではなく、ネットで予約して個人で行く時代になったわけなので、せめて英語併記のIDをもう少し発行してもいいのではないでしょうか。例えば日本人が写真付きIDとして使う免許証を英語併記にするとか、少なくとも大手企業の社員証は顔写真付きで英語併記にするとか(ひょっとしてもう実施されているかも知れませんが)してもいいのではないでしょうか。

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木戸友幸
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