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96)アリスの思い出

 2020年1月15日の朝日新聞朝刊、文化・文明欄に元アリスの谷村新司さんの履歴を語る連載の6回目が載っていました。この回の話は、彼がまだ無名であった1970年の夏に複数の日本のバンドと一緒に40日間、カナダ、アメリカ西海岸とメキシコを演奏しながら旅行した時の逸話でした。
1970年というと大阪万博があった年で、私は医学部を目指して浪人していた年でもあります。当時はまだ1ドル360円で千ドルしか国外持ち出しができなかった時代です。

 そこで彼は、日本の知人に頼んで、旅先に金を送ってもらって食いつないでいたのです。彼がメキシコに着いた頃、その知人が金を持って消えてしまったのです。そんな時、友達になったメキシコ人の誕生日を祝いに家へ歌いに行ったら、何十人も知人を呼んでくれていて、「新司、歌ってくれ」。谷村さん達が困っていることをみんな知ってくれていて、帽子にお金を入れてくれたのだそうです。「僕らはお金の為に歌うことはしない」と断ると、「いや、君の歌に感動したから入れたんだ」憎い言葉を返されたそうです。そのお金の入った帽子を押し付けられて、泣きながらそれを抱きしめて、真夏の夜をモーテルまで歩いて帰ったシーンは、彼の人生ですごく大きな出来事でした。

 どんな国にも悪い奴はいるし、素敵な人もたくさんいる。それが後に、彼が日本を飛び出してアジアに行く全てのベースになったのです。このくだりを読みながら目頭が熱くなりました。やはりこのような体験を踏まえて、異文化コミュニケーションの大切さが本当に理解できると思うのです。本ブログの 91)旅先であったちょっといい話 の数倍インパクトの強い版のように感じました。

 ところで、一浪を経て1971年に大阪医大に入学後、確か3年生くらいの時の大学の文化祭にアリスが演奏に来てくれたのです。当時、アリスは関西でそこそこ知られるようになってきたバンドでした。それでもやはりプロのバンドなので、日頃は地味であまり目立たない単科大学の文化祭を大いに盛り上げてくれました。

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木戸友幸
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