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医学教育  

生活習慣病への効果的なアプローチ

月刊マーク2004年6月号掲載
(医)木戸医院副院長
 木戸友幸


 高血圧、高脂血症、糖尿病に代表される生活習慣病は、開業内科医(家庭医)の長くフォローしている患者の大部分を占めると言って過言ではない。したがって、この患者層にいかに効果的なアプローチをし、安定した患者数を確保するかが、その医院にとっての経営的な鍵になるとも言える。

効果的アプローチを考えるにあたり、生活習慣病の特徴をまず掴む必要がある。
1) 生活習慣病は無症状であることが多い。
2) 服薬を確実にすることにより改善が望め る。
3)薬物療法以外に生活習慣の改善が必要である。
これらの生活習慣病の特徴をしっかり頭に入っていれば、それに対するアプローチは自ずと出てくる。
まず、無症状の患者に定期的に通院してもらうためには、来院して何か得したという感情(満足感)を持ってもらわねばならない。これには、日頃、患者との雑談的な会話をこまめにしておいて、患者のニードに合った情報をその都度提供することが一番効果がある。
服薬を徹底させるには、通院毎に薬剤を商品名で口に出して言いながら、時々はその薬効の説明を加えるという方法がもっとも単純ではあるが実効性がある。食事や運動の生活習慣改善に対しては、出来るだけ具体的な説明を、やはり、その患者の個人的な事情を理解したうえで出来ることを説明するのが効果的である。医師と年齢の近い患者であれば、自らの体験を話すのもよい。そして、検査結果でよい結果が出たときは、大げさ過ぎるくらい褒めることも必要である。

もう少し話を一般化してみよう。
日本の保険診療の特殊事情で、多くの患者を短時間で診療しないと、経営的に成り立たないという構造がある。この構造の中で、患者から必要な情報を得るには、こちら から求めなくても、患者が自主的に自分に起こった変化を医師に自然に伝えられる雰囲気(うちの先生は何でも嫌がらずに聴いてくれる。)作りがもっとも大事であると思っている。これは、一朝一夕では出来ることではなく、その方法は、医師個人の個 性や得意分野によっていろいろなバリエーションが考えられる。
具体的には、少なくとも、医療面接の基本的な教科書を数冊斜め読みして、医師ー患者間の対話の基本を押さえる。それを元にして、何度か患者以外の人を相手に練習してみる。練習を積みながら自らの日本的医療面接スタイルを作り上げるといったところであろうか。話題をいつも豊富にしておくために、常に雑学を積んでおくことも意外に重要なことである。


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木戸友幸
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