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医学教育  

診療所研修

日本家庭医療学会会報
2004年6月1日発行に掲載
(医)木戸医院副院長  木戸友幸


 診療所研修を始めてそろそろ5年になろうとしている。始めは、PCFMネットの先生方とああでもないこうでもないと手探りで始めた。初年度は、数ヶ月に一人実習に来る程度であったが、実習学生のポジティブな反応が確実にこちらに伝わってきて、これは大鉱脈を掘り当てたという感触を感じた。
その感触は当たっていて、年を経る毎に研修者数は増加していった。またこれに追い討ち(いい意味で)をかけたのが、2004年度からの研修義務化であった。プライマリ・ ケア研修重視が感覚的に診療所研修と結びつくためか、2003年度は医療マスコミの取材が殺到し、数週間続けて各社から取材を受けたこともあった。診療所研修の医療・ 医学ににおけるさまざまな議論は、それらの取材の折りに語り尽くした感があるので、当コラムでは、今何故診療所研修なのかについての、現代日本における社会的側面を 少し考えてみたい。

 ここ数年ほど、NHKテレビのプロジェクトXを始めとする、派手ではないが真面目にコツコツと仕事をしてきてある成果を挙げた人の再評価を取り上げたマスコミ番組が評判を呼んでいるようである。医学・医療の世界で、この真面目にコツコツの部類の医師集団は、やはり開業医師ではないだろうかと思われる。マスコミと医療という二つのキーワードからすぐに連想されるのは、医療過誤報道であろう。この場合、医療過誤を指摘される機関のほとんどが大病院である。医療マスコミに携わるジャーナリストの中でも、有能な人たちは、その原因がスタッフ不足などの構造的なものであることが、分かってきているようである。その反動か、比較的スタッフも豊富で、こまめにフォローも出来る開業医の診療所での医療が見直されてきているように思える。
欲目かも知れないが、最近の新聞やテレビの報道で、開業医を取り上げたものは、その医療に対して好意的なものが多いように思われる。以上に示したメディアの潮流は、恐らく現代日本の世論とほぼ一致するであろう。こういう社会的な追い風があるときに、診療所をよりどころとすることの多い家庭医の学術団体である当学会が、診療所研修についてより積極的に取り組んでいくことは、非常に意義深いことであると思うとともに、更なる飛躍への千載一遇の機会になると 思う。


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木戸友幸
mail:kidot@momo.so-net.ne.jp