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医療制度と地域特性のマッチングの必要性

(クリニックマガジン2006年2月号掲載)
木戸医院 木戸友幸

日本の地域医療の特性
 人口密度の高い日本では、都会地では特に医療機関は、診療所から総合病院、大学病院に至るまで、他の先進国と比較するとかなり過密に立地している。これらの医療機関へは、原則的には健康保険証さえ示せば、どこへでも受診できる。かつては、この医療機関の過密さから、医療機関同士の競争の意識が目立ち、診療所でも競って高額医療機器を備えるといったことがあった。しかし、最近、政府の医療の機能分化を促すさまざまな政策が効果を発揮してきている。
2000年から開始された介護保険とそれに関連する高齢者の介護に関わるさまざまシステムや施設は初期はかなりの問題を抱えていたが、次第に地域に根づいてきて、高齢者介護のための貴重な医療資源になりつつある。

当院の診療形態と、その特徴
 当院は、筆者の父の代から40年の歴史があり、地域に根づいた開業診療所である。筆者は、1980年代前半、米国で家庭医療学のレジデンシーを修め、その後、海外を含めたいくつかの医療現場を経て、1997年より地域の家庭医として診療に当たっている。
老若男女を問わず、軽装備で、対話重視の診療を心がけている。当院の立地する大阪市東淀川区は、大阪市の北東部に位置し、吹田市と境を接している。この地域は診療所から大学病院まで、医療施設の数が非常に多く、それらの施設の種類のバランスもとれているし、それぞれの施設の質も高い。
前述したように、ここ10年近くで病診連携は以前に比べ、非常に良好になっている。
当地の医療資源の豊富さと、良好な病診連をうまく利用すると、あたかも大病院の一室を借りて外来診療をしているかの如き診療が、現在、可能になってきている。
いつもより激しい頭痛を訴える患者には、電話一本で緊急頭部CTを依頼できるし、急変した乳幼児や高齢者患者は、依頼先の空きベッドさえあれば、最優先で入院医療を引き受けてもらえる。
急性疾患のみならず、認知症に代表される、以前なら社会的入院を必要とした高齢者患者が、かなりスムーズに介護施設に入所できるようになってきている。それを仲立ちしてくれるケア・マネジャーも5年の歳月を経て、かなり質は上がってきているようである。

Think globally, Act locally.
 エビデンスの裏付けのある家庭医療を日本の地域で効率よく展開していくためには、日本の制度と、地域の特性をうまく利用することが不可欠である。
まず、病診連携であるが、これは現在政府の誘導政策で順調に進んでいるが、政策次第でまた逆戻りする可能性もある。したがって、順風の時によりよい病診連携を作るために、現在3つの病診連携の会の世話人を務めている。年に何度か病院側の医師たちと顔を付きあわせて討論することにより、文字通り「顔の見える関係」が出来、より良い連携が出来つつあるように思える。
介護方面に関しても、過去3年間、地域ケア会議の議長を務め、介護施設長や、ケアマネジャーといった介護を支える職種の人々との情報交換を密にする機会を作っている。
これまで述べてきた地域医療改善のノウハウを次世代に伝えるため、診療所研修に来る研修医や医学生を、上記のさまざまな会議に出来るだけ一緒に出席させるようにしている。

参考文献
1〕木戸友幸 No Side Conference in Primary Careの試み
 クリニシャン 2005年4月号

2)木戸友幸 「病診連携」の最先端:ケースブレーンストーミング
 クリニック・マガジン 2004年1月号


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木戸友幸
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