家庭医木戸の現場報告(23)
2025年4月号 JECCS News Letter
特養の外国人介護士
コロナ禍明けからのこの1年ほどで、インバウンドの外国人旅行者も増えましたが、外国人労働者もじわじわ増加してきています。日本人にとっては就職先としてあまり人気のない介護業界もその例外ではありません。コロナ禍明けからは、これまであまり見かけなかった国からの若者も来日するようになっています。
派遣国は、やはり圧倒的に東南アジア諸国からが多いです。昨今、日本の賃金がアジア諸国と比較しても安いことが問題になっていますが、やはり大多数の東南アジア諸国の若者にとっては、母国での就職難もあり日本への就職はそれなりの魅力あるようです。また母国と比較し、生活環境の良さも魅力の一つのようです。
私が7年間勤務している特養の外国人介護士の御三家は、フィリピン、ベトナム、インドネシアです。女性がほとんどですが、皆、穏やかな性格で働き者ばかりです。言葉の面では、個人の資質にもよりますが、日本人の先輩職員の助けが必要な面も多々あるようです。この御三家の中で、フィリピン人は、こと英語に関しては、ほぼ完璧で、私との会話では日本語は挨拶程度で、ほとんど英語でのやりとりです。外国人介護士から健康相談を受けることも多く、フィリピン人とはその場合も英語でやりとりし、ありがたがられています。ベトナム、インドネシア人は英語があまり得意ではないようで、「やさしい日本語」に徹するようにしています。
最近の新顔は、ネパールとカザフスタンです。彼女らの日本語能力は、前述の御三家とほぼ同様で、日本語能力を真面目な労働で補うといった感じです。この両国からの介護士について、いくつかの発見があります。
ネパールの第一外国語は、英語なのです。彼女らの就職時の健診時に、そのことを初めて知りました。ですから、健診のやりとりは全て英語で全く問題はなかったです。聞くと、ネパールでは英語の授業は小学校から始まるそうです。英語国への出稼ぎの歴史がフィリピンほど長くないせいか、英語の能力や、英語国文化に対する認知度は、フィリピン人よりやや劣っている印象ですが、日本の同世代の若者より英語能力は遥かに高いです。
次にカザフスタンですが、やはり言語についての新発見です。カザフスタンの公用語はカザフ語とロシア語なのです。ロシア語は、カザフスタンが旧ソ連邦に属していたという歴史からきています。驚くべきことは、カザフでは地方語も多く、カザフ語を理解できる国民は8割、ロシア語を理解できるのは9割以上と、なんとロシア語の方が主なのだそうです。うちのカザフ人介護士もカザフ語とロシア語のバイリンガルです。でも、こちらがそのどちらの言語にも無知なので、「やさしい日本語」で会話しています。ちなみに彼(外国人介護士としては少数派の男性です)は、英語はほとんど理解しません。
今回の報告は、特養の外国人労働者との会話から、日本ではあまり知られていない各国の言語事情を知り得たということです。
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