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ボタン 卒後研修義務化にあたっての提言  ボタン


医療法人木戸医院 木戸友幸


 何故義務化に至ったのかを真摯に振り返って、再考することがまず第一歩である。 これまでの、日本の卒後研修はあまりにも無秩序で各施設(特に大学医局)の都合に合わせられすぎていた。恐らく先進諸国の中ではもっとも無秩序な国の一つではなかろうか。
 したがって、研修を義務化するにあたって、先ず必要なのは、全国統一の研修の基準を作ることである。この基準にはどの科の研修であっても、1)医師の都合に合わせるのではなくて、患者側の視点にたった研修であること。2)一般から特殊への流れに沿った研修であること。3)試験等のしかるべき到達度のチェック機構があること。等の要素が含まれていなければならない。
 もう少し具体的に述べると、1)では、どの科にも共通な行動医学的な研修、特に医師ー患者間のインタビュー技術の研修を初期に集中的に行う必要がある。2)もどの科にも共通なプライマリ・ケアの態度と技術の習得をまず行ってから特殊分野へ進 むということであるが、その際は研修場所に臨床最前線の中小病院あるいは診療所なども含める必要がある。3)は現在乱立している専門医試験を淘汰して利用すること も可能である。

 このような全国統一の研修基準が出来てしまえば、研修医の研修の場を選ぶ自由を現在より拡大する必要がある。建前上は現在でも研修の場を選ぶ自由は研修医にあるのだが、現実は旧態依然な「医局制度」に縛られ、研修医の自由度は非常に少ない。研修プログラムを全国の大学病院あるいはその他の医療機関が公募し、研修医は第一から第五くらいの志望を出し、それをマッチさせる制度を作るのがよい。(これは米国で数十年前から行われている制度である。)このことにより、研修病院間あるいは研修医間の自由な競争が生じ、研修制度が活性化し、その結果、研修の成果もより向上するはずである。

 このような研修制度の維持のためには、指導医の数と質の確保が不可欠となる。当面は自転車操業でまかなっていかなければ仕方がないが、指導医研修の充実も同時に進めなければならない。また、過渡期には特に、開業医であっても、指導医の経験がある医師は積極的に研修医指導に参加していくことが望まれる。


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木戸友幸
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