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10)パリ・アメリカン病院での診療体験から

 パリ・アメリカン病院では主に日本人患者の診療に当たっていました。ですから患者とのコミュニケーションという点は、異文化ではなかったわけです。
しかし、患者は日常生活でフランスという異文化に曝されて、そのために精神的に参ってしまっているというケースが多かったのです。日本人はフランス語が苦手で、フランス人も英語を含めた外国語が苦手ということが異文化の壁を高くする要因の最大のものです。しかし、外国人というとフレンドリーでお人好しのアメリカ人を思い浮かべる日本人にとって、その正反対なフランス人(特にパリっ子)に接して戸惑ってしまうことも、異文化障害を起こす大きな要因になっていました。このことからも、欧米というひとくくりの発想は、そろそろ卒業しなければなりません。

 数少ないながら、日本人以外の患者も私の外来を受診したことはあります。アジア諸国の旅行者で、英語で診療を受けたいという患者が、アジア人である私の診療を希望したことが何度かあります。またフランス語しか喋れないフランス人患者の家族が、私の外来を受診したこともあります。この患者は癌の末期で、通常の抗癌療法はもはや適応ではないと宣言されていました。本人と家族は、日本の癌免疫療法の情報を得て、その療法が私の外来で可能かどうかの相談に来たのです。残念ながら、フランスで認められてない医療は、フランス国内では出来なかったのですが、その説明には満足してもらえました。

 これらフランスでの外国人患者とのコミュニケーションは、きわめて良好に終始しました。英語はともかく、私の語彙の乏しいフランス語での説明も大きな不満なく受け入れられました。目的が単純ではっきりしているものであれば、言語的表現が少々稚拙でも、満足感を伴ったコミュニケーションが可能であるとういうことだと思います。

 フランスから帰国してから、アリアンスフランセーズというフランス語学校にまた通い始めました。その学校のパーティーで、私より格段にフランス語能力の高いプロのフランス語通訳をしている女性が、私に本音を語ってくれたことがあります。「いくらフランス語が上手になっても、医師として与えるものが多い木戸さんには、負けてしまう。私も医師や弁護士の資格をとったうえで、フランス語を極めたかった。」
確かに彼女の意見には一理あります。

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木戸友幸
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