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108)ペーパータオル

 2020年の春頃よりの新型コロナ感染症の影響で、普通の布タオルではなくてペーパータオルの使用が様々の場所で広がっています。医療機関ではもちろんのこと、デパート、ホテル、駅などのトイレでも、コロナ前は温風乾燥器がこれまで主流であったのが、これがウイルス感染を助長するという理由で、ペーパータオルに変わりつつあります。私は、医師なので手洗いに関してはコロナ以前から、特に冬のインフルエンザ流行期には、患者を診察する度に手洗いをしていました。ところがその時の手拭きが布タオルだったのです。しかし、2016年から開業をやめて特養で働き始めると、そこは水道のある箇所全ての手拭きがペーパーでした。私自身は、感染防止のためばかりでなく、ペーパーの方が布より断然快適でした。何回も使い回し湿った(それにひょっとしたらウイルスも付着した)布タオルより、乾燥した清潔(ほぼほぼ)なペーパータオルが快適でないわけがありません。

 個人的にはもう一つの感想があります。これで日本もやっと先進国の仲間入りができたのだなというものです。それは、それは医学校卒業3年後の1980年から3年間の研修医(レジデント)としてのアメリカ生活の体験からきています。1980年ですから今から40年前の話です。その頃では、日本もそこそこ先進国っぽくなっていて、アメリカ生活もそんなに驚くこともないだろうと思っていました。奇妙に思われるかもしれませんが、渡米直後に私が一番驚いたのが、家を出たら町中どこでも手洗いをする場所には必ずペーパータオルが備えてあることでした。病院ではもちろんのこと、デパートや街中の汚い公衆トイレまで、ほぼ例外なしでした。ですから、アメリカでは当時でも、手を拭くためにハンカチを持ち歩く必要がなかったのです。私が仕事をし、生活したのがニューヨークだったのですが、大都市だったからそうだったわけではありません。休暇でかなり郊外に出かけた時も、ペーパータオルはどこでも備えられていました。しかし、80年代(あるいはもっと以前から)ペーパータオルが行き渡っていたにもかかわらず、アメリカの新型コロナの感染者数も死亡者数も世界でダントツ一位だというのは皮肉ですね。私の思うに、せっかく場末のトイレにもペーパータオルがあるのに、そもそも手を洗わない人がびっくりするほど多いのが、その理由の一つだと思います。

 新型コロナが近い将来インフルエンザ並みの普通のウイルスになったとしても、これから先、また新たな新型ウイルスが流行する可能性は大です。それを未然に予防するためにも、このペーパータオル使用の習慣が日本でも続くことを願っています。

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木戸友幸
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