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169)藤田嗣治と国吉泰雄:100年目の再会
2025年7月、兵庫県立美術館で「藤田嗣治と国吉泰雄:100年目の再会」を観に行きました。この2人の日本人画家は、20世紀前半という同時代に海外で活躍した画家として有名です。藤田は1920年台のエコール・ド・パリ時代にすでにパリの画壇でも有名人であり、現在でも日本にそのファンは多いです。それに反し、国吉を知る日本人は私を含め極めて少ないようです。彼は17歳で1906年に単身渡米し、肉体労働で生活費を稼ぎながら、複数の美術学校に通いながら絵画を学びました。30歳くらいからニューヨークで画家として認められるようになっていきました。
藤田の全盛期であった1925年に国吉はパリを訪れ、その後も何度かニューヨークからパリを訪れています。この二人の間に交流があったのかどうかにはっきりした証拠はなかったのですが、藤田が作品を展示した展覧会での色紙に両者のペン画と署名が残っているのが発見され、何らかの交流があったことは間違いないようです。
この二人は、活躍した国はフランスとアメリカと違いますが、異国で画家として成果を挙げ、画家としての成熟期に第二次大戦という悲劇があり、思うような活動ができない時期を体験しました。この間、藤田は日本に帰国せざるを得ず、また帝国日本のため意に反し画家として協力せざるを得ませんでした。国吉は初志貫徹し、民主主義国アメリカに協力しました。しかし、その後両者ともに、藤田はフランス、国吉はアメリカに帰化し、名誉も回復しその地で人生を終えたのです。
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