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181)暗号名スイス・アカウント

2026年8月に(ポール・アードマン)著の「暗号名スイス・アカウント」、原題;The Swiss Account, 新潮文庫を読みました。当初は永世中立国スイスの第二次大戦中の事情を知りたくて、10年以上前に購入したものですが、書庫の片隅に入れたままで読まずにいたのを最近発見し、読み始めるとすごく面白く、500ページ超の大作を1週間の通勤の電車内で読破しました。

スイスというと、私を含め皆さんが連想するのは「永世中立国」ですね。1947年に当時GHQ最高司令官マッカーサーが片山首相らに「日本は東洋のスイスたれ」と言ったそうですが、当時も現在も、ほとんどの日本人も日本政府も永世中立国スイスの本質をまったく理解しておらず、スイスが意図的に世界に発信している綺麗な部分だけを捉えているだけのようです。

「暗号名スイス・アカウント」は小説というより、第二次大戦中のスイスとナチス・ドイツとの関係を描いた、ほぼノンフィクション小説なのです。(その証拠;エビデンスとして全ての章の終わりに重要な箇所の引用文献が記載されています)この小説には永世中立と言えばそうなのですが、どんな狡猾な手を使ってでもスイス国家を存続させようとするスイス国家の想像を超えた行動が描かれています。
例えば皆さん、スイスは平和で軍備は持っていないという希望的観測は捨ててください。彼の国は昔から国民皆兵制度をとっています。それだけではなく、その兵役を修了して市民生活に入っても、現役軍人を続け階級も次第に上がり、年に一度は軍事訓練を受ける義務もあるのです。また、彼らの家庭には銃器、それも自動小銃とその銃弾の保持が義務付けられており、敵国がスイスに軍事侵入すれば国民全てが武器を持って応戦する義務があるのです。ここまでは驚きはするけれど、第一次世界大戦を経験したヨーロッパでの永世中立国だから仕方ないかくらいで一応納得はできます。しかし、ここからです。

時は第二次世界大戦末期で、ナチスは中欧諸国の殆どを軍事的に占領し、スイスも風前の灯の状態でした。永世中立でナチスの要求をどこまで許容できるかがスイスの最大の課題でした。第二次大戦後半に入りナチスの軍事的な形勢が悪くなってくると、スイスに対する要求がより露骨に強硬になってきます。それまでも、ドイツに対し兵器の製造に必要な物資や、その部品の製造などをスイス企業に要求し、その輸送にはスイスの鉄道網を自由に使用することもスイスに認めさせていました。しかし1944年に入り連合軍、特に米軍の攻勢により、ドイツは背に腹は変えられない状況に陥ります。ナチス・ドイツは、これまでガス室に送り込んだユダヤ人や占領した国から略奪した大量の金をスイスの銀行に預けていたのです。その金を現金に変えてナチス・ドイツの軍事資金にすることをスイスに要求したのです。それに対してスイスはどう対処したかがこの小説の山場の一つです。その結果はぜひ小説をお読みください。

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木戸友幸
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