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25)英語での司会業修行

 2005年に京都でWONCA(世界家庭医会議)が開かれました。WONCAが日本で開催されるのは初めてのことでした。私は当時、開催主催の日本プライマリ・ケア学会(現日本プライマリ・ケア連合学会)の理事でもあったので、かなり張り切って開催に向けての準備をしていたのです。会議では、日本を代表して、日本のプライマリ・ケアの現状と将来をシンポジストの一人として英語で発表しました。その絡みで、他の特別講演の準備にも顔を突っ込んでいました。

 特別講演の一つに、当時、日本学術会議議長を務められていた黒川清先生の講演がありました。その講演の準備のための打ち合わせ会に同席することになりました。黒川先生の講演の座長は、WONCAの理事の一人であるイギリス人がすることになっていました。そのイギリス人理事が、黒川先生の履歴書を眺めながら、いろいろ確認の質問をしていくのです。イギリス流のユーモアを交えながら、打ち合わせの雰囲気をなごやかなものに持って行く力量はなかなかのものでした。質問が趣味のことに及びました。黒川先生はあまりそういうことを重要視していないのか、適当に答えていました。すると、座長の理事は、いくつかの他の質問をした後に、再度、言葉を変えて、また趣味に関する質問をしました。黒川先生は少し苦笑いを交えながら、今度は、かなり具体的に自らの趣味に関して答えていました。

 特別講演は、黒川先生が近代の歴史的、社会的な医療・医学の流れを滔々と英語で述べられ、大成功に終わりました。しかし、私が注目していたのは、イギリス人理事の座長の仕切りでした。彼は、打ち合わせで得た情報をアドリブで、うまくちりばめ、黒川先生の非常に魅力的な紹介をしました。もちろん、彼が執念をもって得た趣味情報も、うまく紹介の中にはめ込まれていました。
 この後、何度か英語講演の司会や座長を、私が依頼されたことがありましたが、このWONCAでの体験を元に、例え短時間でも、演者との打ち合わせを持つようにしています。

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木戸友幸
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