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35)フランス語しか出来ないフランス人

 来日するフランス人のほとんどが、少なくともある程度の英語は喋ります。また、仕事で来る、特に若いフランス人に至っては、かなり流暢な日本語を操る人も最近は多いです。ですから、多くのフランス人は日本ではほとんどフランス語が通じないことは知っているようです。

 しかし、たまに、特に旅行者で、見事にフランス語だけしか理解できない人がいます。ある日の午前中の診察中に、医院にフランス人から電話が入りました。電話に出ると、慌てているのか、早口のフランス語で喋り始めます。こちらも診察中なので、気が立っているのですが、ここは、落ち着いてこういう時ようのとっておきの一連のフランス語をゆっくり言って聞かせます。
Parler plus lentement, s’il vous plait. (もう少しゆっくり喋ってください。)
Si vous parlez lentement avec des mots et des exspsessions assez simples, je vous comprends. (ゆっくりと、簡単な単語と表現で喋ってもらえれば、理解できます。)
こう言うと、相手も安心して落ち着いてくれます。

 母子二人で日本を旅行して、今大阪に来ているのだけれど、母親の方の足首が腫れて痛くて歩きにくいので、診察して欲しいということでした。
フランス語でのやりとりに時間がかかりそうだったので、診察時間外の午後に来院してもらうことにしました。診察してみると、60代の母親の両足首は確かに少し腫れています。訊くと、フランスではあまり運動することがなかった人だったけれど、日本ではかなり歩き回ったとのことでした。履いている靴を見ると、あまり歩き回る旅行には向かない硬そうな革靴でした。あと二週間ほどの旅行は続けたいとの意向だったので、痛み止めの飲み薬と塗り薬を処方したうえで、ジョギング用の底に衝撃防止材の入った靴の購入を勧めました。
靴をどこで買っていいか分からないと言うので、滞在先のホテルに電話して、適当なスポーツ用品店に案内してもらうようにしました。その後、旅先からの連絡はなかったので、これでうまくいったのだと思います。

  今回の話には、これ以上のオチはありません。日本でも、高齢者の海外旅行は盛んで、これに近い話は日常茶飯事だと推測します。高齢者は外国語にも弱く、持病のある人も多いので、添乗員はそのお世話でさぞ大変だろうなと思った次第です。

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木戸友幸
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