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38)気が利くフランス人

 木戸医院は水曜は午前のみの診療で午後からは休診です。その水曜の午前10時頃に医院にフランス人女性から電話が入りました。彼女はその時日本旅行中で、金沢にいたのですが、当地で非常に痒い発疹ができて何とかして欲しいので電話したとのことでした。フランス領事館(その当時は大阪、現在は京都にあります。)のサイトで木戸医院を知ったとのことでした。

  金沢からだと少なくとも医院に到着するまで、数時間はかかるので、木戸医院の診療は終了しています。しかし、事情が事情なので、出来るだけ早く来てくださいと伝え、私一人で医院で待機していました。彼女は意外に早く、午後2時に医院を訪れました。金沢駅から一番早く出る大阪行きの特急に飛び乗ったそうです。フランス人にしては、ちょっとセンスの悪い服装の中年女性でしたが、頭の回転は速そうな人でした。

  診察すると、両方の太腿に見るからに痒そうな赤い発疹がびっしり出ていました。アレルギーを起こす何かに触れることによって生じる接触性皮膚炎の診断をくだし、飲み薬の痒み止めと塗り薬を処方しました。木戸医院は、その当時から医薬分業になっていて、すぐ隣にある処方箋薬局に処方箋を持って行って薬を貰うようになっていました。水曜の午後は、他に患者はおらず、彼女の日本語能力は挨拶程度ということで、薬局まで付いて行って通訳をしてあげました。

  彼女は、この後も旅行を続け、一週間後に関西国際空港より帰国するとのことでした。帰国といっても、彼女は、上海在住なのです。フランスの大手自動車会社の上海支社に務めているとのことでした。フランス本国からの出向なので、恐らく幹部社員なのでしょう。彼女は、旅行先からも状況を連絡するし、帰国の直前に木戸医院を受診すると言い残し、呼んであげたタクシーに乗って最寄りのJR吹田駅に向かいました。

  旅先からのメールでは、発疹は一日毎に改善し、痒みも治まりつつあるとのことでした。それなら、もう木戸医院への受診は必要ないとメールすると、やはり心配だから予定通り受診したいと返信が来ました。受診日、晴れ晴れとした顔の彼女は、「旅先での親切は本当に嬉しかったです。先生、どうも有り難うございました。」と紙袋を渡してくれました。中には、ワインが入っていました。後でよく見ると、ボルドーのかなり高級な白ワインでした。成城石井の文字も見えました。フランス人患者、それも旅行者からプレゼントを貰ったのはこれが初めてでした。それも、高級ワインを置いている成城石井を誰かに教えてもらって(多分そうだと思います。)、プレゼントを調達し、わざわざ出国一日前に木戸医院を訪ねてくれたのです。お礼の目的で受診したのに、あくまでも診察が目的だと言い張るところも、憎いです。彼女は、本職の自動車会社でも優秀な社員であることは間違いないでしょう。

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木戸友幸
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