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61)英語に不自由のない日本人生徒の実力

 1995年から2年半医師として仕事をしていたパリでの体験です。私は主にパリ在住の日本人の医療に関わっていました。日本人の駐在員や外交官の子弟は、パリで学校に通わなければなりません。その選択肢は主に二つありました。日本人学校か、インターナショナル・スクールです。今回の話題は後者のインターにまつわることです。パリのインターは、別名ビラング(二カ国語の意のフランス語)と呼ばれ、主に英語、それに加えフランス語で教育されます。ですから、そこで学ぶ日本人生徒は、圧倒的に日本人を両親に持つ者が多いので、日本語に加え、英語もほぼ完璧、フランス語もそこそこの状態になれるのです。

 ビラングの生徒達と私の接点は、多くはないにしても、いくつかありました。ビラングの学外実習として、企業や病院などに出向き、そこでの体験をレポートするというのがありました。その施設の一つとして、私が診療していたアメリカン病院も入っていたのです。そこで体験実習をした生徒が、私がいた2年半の間に数人いました。また、ビラングは高校までなのですが、そこを卒業すると、多くは英語国の大学に進みます。その際の健康診断を依頼されることが多かったのです。

 実習で数日を一緒に過ごした生徒達は、皆素直でいい子ばかりでした。それでいて、何しろやることすべてに卒がなくスマートなのです。数週間後にフランス語でタイプされたレポートを見せてくれましが、図表等をふんだんに使ったとても高校生が書いたものには見えませんでした。一番立派なレポートを書いた女子生徒は、東大の理V(医学部)の帰国子女枠に合格したと後に知りました。 健康診断をした生徒は、診断書に合格した大学名が書いてあったので、その場でどこの大学に行くのか分かりました。ハーバード、イエール、マサチューセッツ工科大学(MIT)と皆難関大学に合格していました。

 その時思ったことです。東大理Vは別格としても、日本人高校生でそれなりに頭のよい子が、英語国人と渡り合えるだけの英語力を持っていれば、英語国の難関校のどこでも合格できるんじゃないだろうかと。少なくとも、アメリカの高校生は、日本の受験校の高校生のように、必死に受験勉強をしませんから。

 確かに子供達は、頑張って成果を挙げていますが、その代価を支払う親の苦労についても親の立場として述べておきたいと思います。インターナショナ・スクールの授業料は、日本を含め世界中どこでも平均して、年2万米ドル(約200万円)です。これは並の収入の親では支払える額ではありません。外交官で海外勤務になると、特別手当が出るのですが、子供がいる場合はすべて教育費で飛んでいく、というより赤が出ると知り合いの外交官が嘆いていました。 特に日本でインターに通っていて、もし授業についていけなくなったり、退学になってしまえば、その授業料はまったく無駄になり、日本では学歴なしになってしまうのです。ですから、特に日本でインターナショナル・スクールへの入学はかなりのリスクがあることは確かです。しかし、外地での子弟の教育の場としては、もし授業料が経済的に許されて、生徒の能力が十分であれば、コスト・パフォーマンス的に有利な選択だと思われます。

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木戸友幸
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