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62)情熱さえあれば

 2015年春、ある講演会で、関節リウマチをごく初期の時期に診断するための関節内エコーの話を聴きました。講師は、まだ40歳前の若手でしたが、自信たっぷりに、かつ分かりやすく、そのエコーの仕組みや、血液検査も正常な時期にエコーで診断が付いた症例の紹介などをしてくれました。 講演に先立っての座長による講師の略歴紹介によると、彼はこの関節内エコーの技術を、スペインのバルセルナの大学に留学して学んだということでした。 私は、本来の関節内エコーの話そのものにも、興味を覚えましたが、同時に、彼がスペイン語圏の大学で、どのようにして技術習得を果たしたのかにも興味を持ちました。

 講演後の情報交換会と呼ばれる、立食パーティー風の懇親会で、このことについて質問してみました。すると、彼は少し恥ずかしそうに、「あれは留学というほど、大げさなものではないのです。2ヶ月ほど、集中的に関節内エコーを手取り足取りで教えてもらったのです。」と答えました。その以前から彼は、この関節内エコーについて関心を持っていて、自らも試行錯誤を繰り返していたのです。ある時、このテーマで開かれた国際学会に出席した折に、この関節内エコーの達人と言われるスペイン人女性医師と話し合う機会を得たのです。

 彼は、彼女の技量に惚れ込んでしまい、ぜひ彼女について技術を学びたいと申し出ると、二つ返事でバルセロナにいらっしゃいということになったのだそうです。 彼は、これまでスペイン語を学んだことはまったくなく、コミュニケーションにはかなり不自由したそうです。患者さんとの会話は検査をするだけだから、片言の単語だけのスペイン語で、医師との会話は英語で、何とかいけたそうです。その施設は、スペインではこの関節内エコー検査で名の知られた所だったので、2ヶ月間でもかなりの症例を経験できたそうです。研修の最終日に、研修責任者の鬼軍曹的な医師の試験に合格し、晴れて免許皆伝になったそうです。

 この逸話から分かるように、語学が先にある訳ではなく、仕事(あるいは遊び)に対する情熱が先にあるのです。ですから、幼児期からの親の片思いからの語学教育というのは、百害あって一理なしと思うわけです。

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木戸友幸
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