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7) 国立大阪でのHIV外来

 あれは1980年代半ばの事だったと思います。エイズの原因がウイルスであることが判明し、その検査方法も確立された頃です。
 サウジアラビアが突然、ヴィザの発行の条件としてエイズウイルス(現在のHIV)検査陰性の証明をとれという通告を出したのです。あわてたのは、サウジとの間を行き来する必要のある日本のビジネスマンです。当時、東京でも HIV検査が可能な施設は数カ所、それ以外では我が国立大阪しかありませんでした。東京での検査の順番待ちが長くなっているので何とかならないかとの問い合わせが国立大阪に殺到しました。そこで、当院でも東京からの依頼を含め検査を始めることになり、その窓口になるHIV外来を設けることになり、何と私がその責任者ということになってしまいました。

 それからというもの、サウジがその条件を取り消すまでの数カ月間、週2回のHIV外来を続け100人弱の人たちの検査をしました。幸いなことに一人も陽性は出ませんでした。ある時期から、噂を聞きつけ、関西の同性愛男性たちも検査希望で来院するようになりました。男性同性愛者は、ニューヨーク時代には知り合いに数人いたので、違和感なく接することができました。彼等からの情報によると、日本では同性愛に対する偏見はまだまだ強く、隠れゲイも含めると、同性愛者はかなりの数になるとのことでした。

 日本のビジネスマンも私自身もその時感じたのは、例え一時的にせよ、ヴィザ発行にHIV検査を要求するというのは、何と傲慢で独善的な国策だろうというものでした。
数年後に、このサウジアラビアに私自身が派遣されるようになるとは、この時知る由もありませんでした。

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木戸友幸
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