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75)ケベック人は国際人?

 2016年の夏に、カナダ人の家庭医80人を前に講演をしました。彼らは、同伴の家族を含めると100人の大所帯なのですが、夏休みを利用して東京、広島、大阪、京都を旅行しながら、滞在先で日本の医療人との交流もするという企画を実行したということなのです。
 その団体のリーダーであるクロードからの講演依頼は2ヶ月前にメールで届いており、準備には十分余裕はありました。しかし、英語で1時間の講演と30分の質疑応答は、かなりのプレッシャーのかかる仕事ではありました。9月4日(日曜)朝の当日、約束の時刻の30分前に大阪ヒルトンの宴会場に到着すると、クロードが愛想良く迎えてくれました。

 さて、当日の講演では、日本の一般開業医(家庭医)の診療の特徴を語ったのですが、クロードと事前にメールで何度も意見を交わし、介護保険や開業医と病院勤務医との所得の差といった日本独自の事象も語りました。講演は1時間にわたる長丁場なので、英語で行いましたが、カナダのケベック地方ではフランス語を母国語とする人がほとんどなので、冒頭の5分間はフランス語で行いました。
 冒頭のフランス語部分も、原稿読みではなくてアドリブでしゃべったので、こちらのフランス語能力も少し分かってもらえたようでした。質疑応答も終了し、雑談タイムになると、前列の中年男性医師が「ドクター・キドは、本当に素晴らしい。日本人でありながら、英語もフランス語も出来て、国際人として活躍している。」と言ってくれました。ところがその時、少し違和感を感じたのです。彼(彼女)らも、ケベック地方のカナダ人で、少々訛りがあるとはいえ、フランス語が母国語で、英語も不自由なく、国際人の資格は十分あるのです。しかし、カナダ人一般の性格として、カナダを飛び出して世界で活躍しようといったような気概はあまりないようなのです。フランス語圏ということで、講演の中に私のパリでの体験なども盛り込んだのですが、あまり反応はよくなかったです。むしろ、ブルックリンで研修したという部分が受けました。

 確かにカナダは北米の先進国であることは間違いのない事実なのですが、隣国の超大国、米国の影で少しくすんでいるという印象です。米国でも一般市民は、世界の情勢などにはあまり関心はなく、「巨大な田舎」という感じなのですが、カナダはそれに輪をかけたような状況のようです。
 個人的には、1960年代から続いている「ケペック独立運動」が成就して、独立したケベック州がフランスを中心とするEUと関係を深めていけば、面白いのになあと思っている次第です。

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木戸友幸
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