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81)プラスティック

 21世紀になってからの数年間、卒業高校の同窓会のネット掲示板が盛り上がったことがありました。その中で、時々書き込んでくれるTくんは日本で国立O大学を卒業した後アメリカの大学を卒業し、当地の大手IT企業に勤めていました。彼の趣味は映画で、特に当時で30年ほど生活していたアメリカの映画は様々なトリビアを熟知しており、折に触れてその話題を書き込んでくれました。彼が書いてくれた映画の名(迷?)セリフで今でもよく使われているものとして、私にとって印象深かったのが、あのダスティン・ホフマンの出世作「卒業」で、ホフマン演じるベンが不倫した彼の恋人の母親の夫が、ホームパーティの席でベンに自慢げに教えを垂れる場面です。「今、何に投資するのが一番か分かるかい?」と親父。ベンが答えられずにいると、「プラスティック」と自信たっぷりに言うのです。これは封切り当時の60年代後半でも十分陳腐な認識だったようです。今でも英語国では、ビジネストーク中に相手がしつこく儲け話の情報をせがんできた時などに、ちょっと間をとってから一言「プラスティック」と答えると、笑いをとれるそうです。

 そんな思い出をそろそろ忘れかけていた2018年11月28日の日経朝刊(毎朝通勤電車で読んでます。)のopinion欄に、日経と提携しているThe Economistの翻訳記事が出ていました。題して「ワンマン経営、尽きぬリスク」。カルロス・ゴーンの失脚を例に挙げ、ワンマン経営のリスクを論じた記事でした。その記事のなかで、「1960年代〜70年代に、企業を牛耳るトップは絶滅するはずだった。代わりに台頭したのは、面白みに欠ける小粒の経営者だった。」とし、その例として上記の映画「卒業」のプラスティックと宣ったあの親父のセリフを挙げていたのです。

 Tくんが、冗談で場を和ますための決めゼリフとして挙げていたものが、イギリスのクオリティー・ペーパーThe Economistの真面目な記事にも出て来たので、ちょっとびっくりでした。今更ながら、Tくんの博識ぶりにも脱帽です。私も出来れば何かの折に、英語国民相手に「プラスティック」の一言で笑いをとってみたいものです。

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木戸友幸
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