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85)希少薬で勝負!

 2019年3月25日の日本経済新聞朝刊の記事です。「希少薬、日本発で世界へ」という見出しで、日本の製薬会社が希少疾患(患者数が極めて少ない疾患で世界に7千近い種類があるとされている。)を対象にした希少薬を開発し、政府もこの後押しをするという内容でした。日本の製薬会社は、欧米の大手に比べ、資本力が小さく開発にかける資金が足りていません。したがって、現在、世界でもっとも消費されている循環器系の薬剤や抗癌剤などの開発ではどうしても遅れをとっています。そこで、白羽の矢が立ったのが、欧米の製薬大手がほとんど手がけていない希少薬品の開発だったようです。この分野は、近年の人工知能やデータ解析技術の進展で新薬開発の効率化が進み、十分収益化が可能になってきているそうなのです。もちろん、疾患数が少ないので、国内だけで販売しても収益が出ないので世界で売る必要はあります。そして、効果のある希少薬が開発できた暁には、海外でも競争相手がないということで、十分利益が出るということです。

 昨今、日本発の抗癌剤で非常に効果が高いもの出て注目を浴びましたが、効果だけではなく、価格も目玉が飛び出るほど高いのです。確かに、これでは製薬会社は儲かっても、日本の健康保険財政が破綻しかねません。その点、希少薬の対象になる患者は希少疾患患者で患者数は少なく、そのほとんどすべてが難病指定を受けており、その治療費には多額の補助があり、患者負担は非常に少ないのです。ということで、希少薬が開発が成功しても、製薬会社と患者の間には利益相反はほとんどありません。

 3月末の記事から2ヶ月余りたった2019年6月4日の日経朝刊にこんな記事が載りました。中堅医薬品メーカーの日本新薬が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの希少薬の開発に成功したのです。それも核酸医薬技術という新しい技術を使った新薬なのです。「希少薬、日本発で世界へ」は現実のものになったのです。

 かつて道修町を中心に日本の製薬業が栄えた大阪出身の私としては、この逆転の発想で大阪と言わずとも、日本の製薬業界が世界と渡り合えるようになってくれることを祈っています。

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木戸友幸
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