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87)ハリウッド映画のアジア人

 2019年の夏、通勤中の大阪メトロ中で少し変わった宣伝ポスターを発見しました。英語で Don’t think. Feelcycle. とだけの文章があり、その下によくジムに置いてあるエアロバイクの写真が写っているものです。エアロバイクの宣伝らしいことが理解できたのですが、この英語のセリフ、どこかで聴いた覚えがありました。そうだ!思い出しました。Enter The Dragon. (邦題、燃えよドラゴン)の中でのBruce Leeの有名な台詞です。Bruceが弟子に稽古を付けている時に、弟子に対し技が身についたかどうかを尋ねます。弟子は I think・・・と言いかけます。それを制してBruceがいう台詞が Don’t think. Feel!(考えるんじゃない。感じるんだ。)と言うのです。Feel の部分をフィールと長く伸ばして発音したのを、今でも覚えています。ですから、この宣伝文句はどう考えても、この映画の台詞のパクリに違いありません。

 ひょんなことから思い出したEnter The Dragonのことから、ハリウッド映画でのアジア系俳優の活躍に考えが及びました。というのは、2018年秋に日本でも公開された Crazy Rich というハリウッド映画が、主役を含め俳優のほとんどが中国系アメリカ人だったことで、かなりの話題になったのです。私が週一回夜に通っているフランス語学校でも、この映画が話題として取り上げられました。この映画は、世界第2の経済大国になった中国の力を背景にして、アメリカを始めとして世界中で経済的に成功を収めつつある華僑の織りなす喜劇なのです。ですから中国の有形、無形の影響もあってヒットした映画と言っても過言ではないと思います。

 翻ってBruce のEnter The Dragonはどうだったんでしょうか?皆さん、映画は観たことがなくても、あの細身の筋肉質の肉体美、ヌンチャクの妙技、「アチョー」の気合い等にまったく覚えのない人はあまりいないでしょう。全米での公開はほぼ半世紀前の1970代始めです。Bruce はこの作品に全精力を注ぎ込みました。彼は監督こそ務めませんでしたが、主役、演技指導(もちろん格闘技場面中心の)のすべてを受け持ったのです。ストーリーも彼の主張で途中変更して、トラブルになったというエピソードも伝えられています。クランクアップの直後に精も根も尽き果てたのか、彼は原因不明の疾患で死亡してしまうのです。ですから、Enter The Dragon が全米で封切られた時、その主役はもうこの世にはいなかったのです。主役の突然死という衝撃的な事件もあってか、映画は大ヒットし、その後、香港、日本、全世界でカンフー旋風を巻き起こしました。そして、半世紀後の2019年でも、Youtubeを覗けば彼の勇姿は世界中どこからでも見聞きできますし、その台詞は、大阪の地下鉄広告でもそのパクリが出るのです。
やはり、ハリウッド映画のアジア人俳優ナンバーワンは、この先も半永久的にBruce Leeで決まりでしょう。

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木戸友幸
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