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  JECCS Newsletter No.4 2001年10月


 私はジェックスの理事の中では数少ない循環器を専門としない医師です。私の専門は 「家庭医療」(Family Medicine)という、子供から老人まで診る幅の広い医療なのです。そういう私がジェックスの中で貢献させていただいている分野の一つが外国人医療です。家庭医療のトレーニングを米国で受け、帰国後は日本で外国人診療も続けていたこと、フランスで在留邦人の医療に携わったことがあることなどの、異文化圏での医療体験が豊富であるという理由で、この分野をお引き受けしました。

 さて、日本に滞在する外国人が、医療を受ける時に何を一番不安に思っているかご存知でしょうか?
確かに、英語を始めとする外国語での対応が十分出来ないといったこ ともあります。しかし、多くの外国人の真の不安は日本の医療関係者の外国人患者への対応、あるいは日本の医療の質といった、医療の根幹に係わることに向けられているようなのです。昨年、新聞記事にもなった事件があります。関西在住のインドネシア人留学生が、腹痛を訴えて医療を求めたのですが、いわゆる「たらい回し」をされ、結局は自宅で死亡してしまったのです。診療拒否の理由は、意志の疎通をはかれない患者は責任を持って診れないということらしいのです。自らが、海外に出て、患者になった時に、そう言われたらどうだろうかと考えてみるだけで、それが医療者としてやってはいけないことだということが分かるはずです。私は、複数の外資系損保会社の顧問をしていますが、欧米系の顧客が日本の病院に入院して、検査で癌が判明すると、例え顧客が日本での治療を望んでも無理やりに、祖国に連れ戻して、欧米での治療を受けさせようとします。資本の理論からも、日本の医療は、外の世界からはまだまだ信用されていないのです。

 最初、私はジェックスがどうして外国人医療にまで協力しているのか少し疑問に思っていました。しかし、外国人医療を通して、日本の医療が外からいかに低く見られているか(そう見られて当然なところも、そうでないところもありますが)を知り、これは、ジェックスの本来の役割である医学教育に直接つながっていることだと思うようになったのです。即ち、日本の医療をグローバル・スタンダードに近づけるべく、臨床研修に工夫を凝らせば、現在の外国人医療に見られる様々な問題も次第に減少していくのではないかということです。

 好むと好まざるに係わらず、すべての分野でグローバリゼーションが進んでいく昨今です。医療の世界でも、経済的な効率のみに走り、内向きの論理に凝り固まってしまうと、世界の孤児になってしまいます。外国人医療を日本医療を見る鏡として、これからも、ジェックスの活動、あるいは医学教育全般に取り組んでいきたいと思います。

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木戸友幸
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