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文明の衝突

 我々日本人は、こと宗教に関しては恐らく世界で一番寛容な心を持った(いい加減ということ?)国民なのではないでしょうか。キリスト教徒は、今でこそ教会に毎週通う人は少なくなりましたが、やはり困難な局面に直面した時はやはり一神教的な考え方をします。イスラム教は国によって、その戒律の厳しさはかなり違いますが、一般的にキリスト教よりさらに一神教宗教的で、具体的には格段に戒律が厳しいです。サウジアラビアはイスラム教の戒律という面では、かなり厳しい国の一つです。イスラム教の祈りの時間は定時に決められており、早朝から街中に大音響でコーランの読経の放送が流れます。また、非イスラム教徒の外国人を含め、国内での飲酒は固く禁じられています。

 さて、湾岸危機に際して大量の米軍がサウジに駐留しました。これは宗教的に見ると、キリスト教という異教徒の軍隊が大量にイスラム教の聖地(メッカはサウジアラビアにあります。)に侵入したということになるのです。サウジのイスラム関係者たちの神経は、この時期かなり高ぶっていました。サウジには宗教警察というのがあり、イスラム教の教理に反する行為の取り締まりをするのです。非イスラム教徒の外国人に対する取り締まりが特に厳しくなりました。

 外国人が犯す宗教的犯罪で圧倒的に多いのは、飲酒です。どうせ分からないだろうと思って、ホテルの部屋でこっそり持ち込んだウイスキーを飲んでも、宗教警察に引っ張られることが続出しました。これは、ホテルのボーイにスパイ行為をさせているとのことでした。大使館や外交官公邸は、治外法権なので、その中で飲酒するのは大丈夫なのです。しかし、感情的になっている宗教警察は、パーティーをしている外交官公邸の外に待機しており、公邸外で明らかに酩酊していると分かる出席者を逮捕しました。日本人で逮捕されて、外交官が後で貰い受けに出向いた人たちが数人いたようです。

 我々医療隊は夕食は外食のことが多かったのですが、メニューも口に合い、値段も手頃な韓国レストランに皆でよく行きました。でも、焼き肉につきもののビールはノンアルコールのものでした。アルコールなしのビールは初体験でしたが、おいしくはないにしても、それほどまずくもなかったです。ビールに関しては、米国の某ビール会社(確かバドワイザー)が大量のノンアルコール・ビールをサウジ駐留の米軍兵士に寄贈したという報道がありました。

 米軍も宗教的な感情にはかなり気を使ってはいました。テレビの英語放送では、米軍兵士あての注意喚起の放送をしていました。女性兵士のオフ・デューティーのときの服装は、タンク・トップなどの肌もあらわなものは避けるように、宗教施設に入るときはショート・パンツは避けるように、男女を問わず、十字架をかたどったペンダントを身に付けないようにとかいった非常に具体的なものでした。

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木戸友幸
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