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ちょっと斜めから見た「人種差別 」(2)

 ER(救急室)勤務の時のエピソードです。
ある中年の黒人女性が、意識朦朧状態で担ぎ込まれてきました。どうも、薬物かアルコールの中毒らしいのですが、何しろ朦朧状態なので、救急室のストレッチャーの上に寝かせたまましばらく様子観察することにしました。

1時間ほどたって、意識が戻ってきて何とかしゃべれるようになりました。その時患者に喋りかけたのは黒人の研修医でした。すると、その黒人女性患者は、「私はホワイト・ドクターに診てもらいたいんだよ。あんたじゃ嫌だよ。」と言ったのです。

その当時は、黒人の研修医は未だ少なく、ERにも白人の研修医は何人もいたので、そう言われた黒人研修医は大して嫌な顔もせず、近くにいた白人の研修医を連れてきて、「さあ、お望みのホワイト・ドクターだよ。」とちょっと冗談っぽく患者に告げました。

連れてこられた「ホワイト・ ドクター」もちょっと照れ臭いのか、「顔は白人だけど、ジュイッシュ(ユダヤ系) だぜ。」とちょっと悪ぶって患者に言うと、患者は「ジュイッシュでも、イタリアンでも私にとっちゃ、みんなホワイト・ドクターさ。」と満足そうに答えました。
その場に居合わせた数人の研修医は、この変わったやり取りを聞いて、皆苦笑を浮かべていたのを覚えています。

後で、この黒人研修医に訊いてみると、白人の医師に診察してもらいたがる黒人患者は実際に結構いて、特に女性患者に多いそうです。彼は、そのことについて、まあ一つの考え方だから、あまり深刻に考えたことはないけれど、「やっぱりあんまりいい気持ちはしないよなあ・・・。」と言っていました。

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木戸友幸
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