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L'ETE 1975  

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12)ドゥニの反抗
 ドゥニは60代のイギリス人の頑固親爺です。英語で発音するとデニスです。ある日の授業で、教師のミリエルが何かの用事があり、30分以上の遅刻をしたことがありました。すると、クラスの多数派であるベネズエラ軍団の連中が勢いづき、時間がもったいないから、何かフランス語で討論を始めようと提案してきました。提案自体は積極的で向学心に燃えていていいのですが、ベネズエラ人同士でも討論し合いながら提案するものだから、交わされる言葉の半分がスペイン語なのです。

 それ以外のクラスの連中が、まあそれでもその提案に乗ろうかと思った矢先に、ドゥニが突然興奮しながら発言したのです。「アレテ。ブ・ネット・パ.プロフェソール。ブ・ヌ・メーム・パルレ・パ.フランセ。(止めなさい。あなた方は教師ではないし、フランス語すらしゃべっていない。」と辛辣にベネズエラ軍団に叛旗を翻したのです。

 意外な人物から反論されたベネズエラ軍団は皆、まさにポカンとした表情で放心状態で、ドゥニに再反論することは出来ませんでした。そうこうしているうちに、ミリエルが到着し、通常の授業が始まってしまいました。

 あの突然のドゥニの怒りは何だったんでしょうか?私はドゥニとは最後まで打ち解けることはなかったので、想像ですが、あの年代のイギリス人というのは、非白人に対してのいわれのない偏見を持っているように思えます。ドゥニ自身は年齢のこともあり、フランス語の能力はクラスの中でも下位でした。ですから、偏見と劣等感が重なっての怒りであろうというのが私の推理です。

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木戸友幸
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